●認知行動療法とは

 

認知行動療法とは、人間の感情や行動が認知のあり方(ものごとの考え方や捉え方)の影響を受けることから認知の偏りを修正し、問題解決を手助けすることによって精神疾患を治療することを目的とした構造化された心理療法です。

 

気分が沈み込んでいる時はあらゆる出来事が落ち込みや不安の原因となり、ささいな失敗でも「何をやってもうまくいかない」、「自分はダメな人間だ」などと感じてしまうかもしれません。一方で、同じ出来事に遭遇してもそれほど気にしない人、すぐに立ち直る人もいます。このような感じ方の違いは「認知」の違いから生まれます。
認知とは簡単に言えば、ものごとの捉え方のことです。つまり、つらい感情を引き起す原因は、つらい出来事や状況そのものではなく、頭の中にある「認知」というフィルターであり、以下のように、認知と感情、行動は密接に関わっています。

 

出来事・状況

 

 

認知

 

 

感情・行動

 

また、認知には、思考の表層にある「自動思考」と、より深層にある「スキーマ」に分けられます。
自動思考とは、さまざまな場面や状況で、日ごろから頭に浮かぶ思考やイメージのことです。自動思考の元になっているのは、その人の人生観や価値観、信念とも言えるスキーマです。
スキーマは、生まれながらの性質、親からの育てられ方、過去の経験などの影響を受けて形成されてきたものです。そのため、意識しても簡単に変えられるものではありません。そこで非適応的な自動思考を適応的な自動思考に変えるトレーニングを行い、それからスキーマに挑みます。

 

このような認知のあり方や行動を修正するための手法が認知行動療法であり、うつ病、パニック障害、社交不安障害、強迫性障害、心的外傷後ストレス障害、不眠症、摂食障害、パーソナリティ障害、統合失調症などの疾患に対して、科学的な根拠に基づき有効性が報告されており、薬物療法と同等の効果を持つとの報告もあります。

 

2010年より日本においてもうつ病などの疾患に対して保険診療として認められた治療法であり、日本うつ病学会ガイドラインにおいても、うつ病の治療において薬物療法単独よりも認知行動療法を併用した場合の再発予防効果が高いことが立証されています。